« 鈴鹿8耐に行った | トップページ | おはようサンバー »

さよならサンバー

平成19年、2007年1月にサンバーは僕の元にやってきた。型式名、TV1。僕にとっては4代目のサンバーだった。

Sambar1

3代目サンバーの後、主にはレースバイクのトランポ用途で200型ハイエースを新車で購入した。しかし、予想以上に運転がつまらなくて、半年ほどで売り飛ばした。そして改めて、運転が楽しいサンバーを買った。それが今、お別れしようとしている4代目である。

購入当時、2万2000km走行していた中古車だった。商用バンで、内装は鉄板剥き出し、リヤはベンチシート、サスはガチガチで突き上げを食らいまくる。スパルタンといえば、これほどまでにスパルタンなクルマもなかった。

しかし、運転はベラボーに楽しかった。軽の枠を越えた4気筒エンジンは、超高回転型。タコメーターがないので具体的な数値は分からないが、本当に気持ちよく伸びる。が、車速は伸びない。そこがいいのだ。他からしたら「……ん? 何かノソノソ動いてるか?」と思うほどの低速域でも、乗っている本人としてはサイコーの伸び上がり感が楽しめるのだ。ある意味、安全とも言える。

リヤエンジン・リヤドライブという駆動方式は、実にシャープでクイックなハンドリングをもたらしてくれた。ハンドルをクッと切った瞬間にスッとフロントが入る。若干のオーバーステア傾向を感じながらのコーナリングは、これまた低速域で得られる悦楽だった。

エンジンフィーリングもハンドリングも、低速域で十分に楽しめる。サンバーは、そういう乗り物が存在し得ることを、教えてくれた。

先日、ホンダの最新鋭ミッドシップ軽・S660に乗った。確かに非常によくできていて、限界も高い。が、それゆえに、常用的な速度域では「操っている!」という実感に乏しかった。どんなコーナーも何事もなかったように駆け抜けるだけで、正直なところ面白みはなかった。

スポーツカーは、メーカーがマジメに作り込めば作り込むほど限界が高くなり、ギリギリをコントロールしているという実感を得るには、速度域も高くなってしまう。それでは、(基本的には)低速で走る公道でちっとも楽しめない。せいぜい、所有欲が満たされるぐらいで、本当の意味で運転を楽しむことはできない。

一方のサンバーは、スポーツカーではない。ただの軽ワンボである。スポーツカーとしての性能を追求したわけではなく、軽ワンボとしての積載性を追求しただけだ。サンバーの開発者たちに話を聞いたことがないので分からないが、恐らくは「運転の楽しさ」なんてことは考えず、ひたすら質実剛健に「働くクルマ」としての機能を追い求めたに違いない。

……どうだろう。

なぜエンジンがいっちょまえな4気筒なのか、なぜサスペンションがいっちょまえな4輪独立懸架なのか、それらが本当に「働くクルマ」としての機能として必要なものだったのか……。もしかしたらスバルの開発者たちは、「働くクルマこそ運転が楽しくなければならない」と考えたのかもしれない。「いろいろとツライことが多い仕事だから、せめて運転ぐらいは楽しい方がいい」と。その方が、4発や4独の意味はすんなりと理解できる。

4発も4独も、「最低限の機能」ではないからだ。「仕事グルマだからテキトーでいいよ」という投げやり感は、エンジンからもサスペンションからも感じられない。

実際のところサンバーは、都内でひどい渋滞に巻き込まれても、上り坂で徐々に減速しても、バイクを積んで遅さに輪がかかっても、常に楽しかった。ドアの開け閉めも含めて何もかもが軽快で、仕事の足として、バイクを運ぶトランポとして、釣り車としても、これ以上の存在はなかった。

最初に述べたように、あちこち本当に安っぽい。内装は最低限で、鉄板剥き出し箇所も多いので、夏暑く、冬寒い。もっと正確に言えば、夏熱く、冬冷たい。中古サンバーの“標準仕様”として、バンパーが凹んでいた。バンパーだけじゃない。あちこち凹みだらけで、錆も浮いていた。お世辞にもキレイとは言えなかった。大企業のビルの駐車場に乗り付けたところ、「はいどうぞー」と業者搬入口に誘導されたこともある。

でも、何もかもが許せた。サンバーは本当にかわいいクルマだった。いつも一所懸命で、とても健気で、愛らしかった。サンバーに、不満なんかなかった。多少の不便さ、多少のアラよりも、もっとでっかい喜びを授けてくれた。

運転の喜びだけじゃない。とにかく積める。ココに記したように多くのバイクを積載してきたし、粗大ゴミ捨ても楽勝だったし、釣り用のでっかいクーラーを積んでも余裕があった。本当に、さまざまな場面でサンバーは活躍してくれた。

ああ、思い出してきた。なぜ僕がサンバーに巡り会ったのかを。

(僕にとっての)初代サンバーを買ったのは、20年ほど前のことだった。当時、僕は先輩から2スト125ccのモトクロッサーを譲ってもらい、さてこれをどうやって運んだものかと思案していた。それまで乗っていたMR2(AW11)が車検を迎えるタイミングもあって、「モトクロッサーを積めるトランポ」を真剣に探していたのだ。

維持費のこともあって、軽自動車にしようと決めていた。軽ワンボックスのカタログを片っ端から集めて、荷室の広さを詳細に検討した。その結果、三菱のブラボーか、富士重工のサンバーの2択となっていた。三菱か、富士重工か。あたかも戦時中のような選択を迫られた。ブラボーとかサンバーとか、お祭り騒ぎなネーミングを含め、装備も機能も見てくれもどうでもよかった。判断基準はただ、どっちか荷室が広く、どっちがモトクロッサーを積むのに最適か、だけだった。

最終的に僕はサンバーを選んだ。そして、近所の中古車屋で野ざらし的に売られていた白くて丸目のサンバーを買った。機能だけで選んだのに、なぜか機能以上に魅せられた。「ウマが合った」としか言いようがない。以降、モトクロッサーを手放してからも、僕の手元にはたいていサンバーがあった。必須というわけではなく、サンバーがない時期もあったが、常に手元に置いておきたい1台だった。

その後、ガンメタ、緑、そして今の銀と、4台のサンバーに乗ってきた。特に現行の銀サンバーは、2万2000km走行で購入してから8年で13万6000kmに到達。11万4000kmに及び、僕を楽しませてくれた。他にインプレッサとホーネットを所有し、それぞれに気に入って走らせているが、中でもサンバーにはだいぶ乗ったなあ、という印象だ。

でも、ちっとも大事にしなかった。メンテナンスも最低限だった……どころか、むしろおろそかにしていた。そのせいもあって、ここのところサンバーは絶不調だった。エンジンの中回転域でのパワーが失われ、回転もスムーズではなくなった。止まる恐れはなかったが、ちょっとした坂道を上りきれず、いったん下がって助走をつけて上るといった有様だった。いつ何があってもおかしくない状態が続いた。

「もっと大事にしてやればよかった」と反省しても、手遅れだった。直してやるにも、常にフル稼働しているものだから、思うように時間が取れない。それに、頻繁に釣りに行くようになって、さすがに長距離移動時のパワー不足や快適性不足も痛感していた。

そうこうしているうちに、車検が迫ってきた。車検費用に、修理費用。いつもお世話になっているスバルの中古車屋さんにいろいろ相談した結果、ついに車検を諦め、サンバーとの別れを決めた。

ノリックを荷台に乗せ、中野真矢さんが運転して楽しさに感動し、丸山浩さんがコーナリング中にアクセルを踏み込んでタイヤを終わらせ、バッテリーが上がって青山周平さんたちに押してもらったサンバー。バイクを積み、釣具を積み、粗大ゴミを積み、いっぱいの思い出を積んだサンバー。朝焼け、夕焼け、星空、青空。たくさんの景色を見せてくれた、かわいいサンバー。大事にしなかったのに健気にベタ踏みに応えてくれる、本当にかわいいクルマだった。

でも、物事はいつも流転するものだ。変化を恐れてはいけない。扉を開けることに、怯えてはいけない。僕はサンバーと別れて、新しいカーライフを迎えよう。勇気を持って、サンバーの鍵を置こう。

ありがとう、サンバー。
さよなら、サンバー。
本当に、ありがとう。

Sambar3_2

にほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへ←そういえばこんなのあったな。サンバーへの惜別の思いを込めて、ジュワッと押してみませんか?

|

« 鈴鹿8耐に行った | トップページ | おはようサンバー »

コメント

(´;ω;`)ブワッ・・・涙出てきた。
現在、トラックとバンを飼っている。大事にしてみる。

投稿: so_art | 2015.10.07 10:24

久しぶりにページを開いたら、想像の斜め上を行く衝撃の展開にびっくりしました・・・

我が家のサンバー君も、いつの日か別れの時が来るとは思いますが、その時まで大切にしてやろうとおもいます


・・・で、次の愛車もサンバー(もちろんマルフ製)ですよね?・・・そうだと信じていますよ

投稿: スーパーカー自転車野郎 | 2015.10.07 21:33

最初は『またどうせ凝った冗談だろ~な~』と思いながらタイトルを読んでいました。読み進むにつれて今までのサンバー愛を振り返りながら、そしてこれまでのサンバーの記事を全てを思い出しながら…中盤で涙ぐんできて最後はポロポロ泣いてしまいました。サンバーお疲れさまでした。このブログが削除されない限り読者はみなゴウサンサンバー…いえ、剛さんサンバーの思い出に触れあえる。また一度『トランポを買い換えた』から読み返そうと思います。スバルがいつかまたサンバーのように奇跡が産んだような夢の車を発売してくれることを切に願います。イチバーでもなくニバーですらないサンバーにビバサンバー!!!

投稿: すけ | 2015.10.08 23:52

我が愛車の13年モノHONDA製4人乗りミッドシップスーパースポーツは、大枚はたいてヌケたヘッドガスケットとタイベルその他を交換し、ストレートカットのドグミッション並みにうなりを上げるトランスミッションをオーバーホールしました。ブツけて凹んだリヤゲートとリヤフェンダーはトンカチでたたいてパテを盛ってフラサフ吹いた時点で力尽き、無塗装のまま半年が過ぎようとしています。
カチカチに硬化したゴム部品にはコケが生えています。

だけど愛しています。

いっそ、住宅ローンが終わるまで(あと10年以上)乗ってやろうかと思っております。
こいつと別れる時を想像するだけで目頭が熱くなります。

心中お察しいたします。

投稿: handsome-r | 2015.10.09 00:13

初めてコメントさせて頂きます。

貴殿が感じておられるサンバーという車感、自分もほぼ同じ事を乗りながら感じています。なんでこんなに楽しいんでしょうね、サンバーっていう車は。カタログスペックや理屈じゃなくて、乗って操ってみた際の感性で感じる楽しさや面白さなんだと思います。

自分のサンバーはスバルの軽撤退によりサンバーがなくなってしまう、という話が出たときにあわてて買った2010年式のTV2ですが、大事に乗ってサンバーという車を出来るだけ未来に引っ張って行こうと思います(^◇^)
 

投稿: ino | 2015.10.10 09:15

> so_artさん
ブワッと涙を出させておいてスミマセン。すかさずサンバー買っちゃってました。

so_artさんのブログ拝見しましたが、まさかの同色!? 確かにカエルっぽいですが、オレの中では犬です。黒犬。イメージ的にはラブラドールレトリバー。わんわん。

投稿: ごう | 2015.10.21 12:00

>スーパーカー自転車野郎さん
すいません、読み通りのシンプルな展開でした。もちろんマルフですよ!

投稿: ごう | 2015.10.21 12:01

>すけさん
ポロポロ流していただいた涙に申し訳ないのですが、5代目ごうさんサンバー=サンバー5として素早く復帰してしまいました。またブッ壊れるまで乗り倒す所存ですので、何卒ご容赦ください……。

投稿: ごう | 2015.10.21 12:03

>handsome-rさん
バイクもクルマも、気に入って買って、たくさんの思い出を作ってくれるものですから、手放すのはいつも本当につらいですよね。莫大な資金と広大な土地を所有していれば、といつも自分を不甲斐なく思います。でも、別れと出会いを繰り返すのも、またドラマチックでいいかな、と。サンバー4のことは決して忘れませんが、これからはサンバー5とともに歩んで行きます。……どこへ?

投稿: ごう | 2015.10.21 12:06

>inoさん
積んでますねー! しかも2010年式!! なんてまばゆいんだ……。フォグランプ、オレも付けたいんだよなー……。

投稿: ごう | 2015.10.21 12:09

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91489/62426303

この記事へのトラックバック一覧です: さよならサンバー:

« 鈴鹿8耐に行った | トップページ | おはようサンバー »