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MOTO BIRDS 〜彼らが飛ぶ理由〜

FREESTYLE MOTOCROSS
THE REASON THEY JUMP HIGHER


ハデなアクション、クールなファッション。
「見せる」ことを重視したフリースタイルモトクロスは、
モータースポーツの新しい流れだ。
佐藤英吾はライダーとしてFMXを楽しみながら空を舞う。
しかし彼が飛ぶ理由はそれだけではなかった。

JUMP FOR MYSELF,
FLY FOR THE FUTURE


 カタパルトから文字通り“発射”されるモトクロッサー。空中にとどまるわずか数秒の間にできるだけハデなエアトリックを見せ、できるだけ観客を沸かせたヤツが勝ち。これがフリースタイルモトクロス、FMXだ。
 レースのように一斉にスタートしてタイムを競いあう今までのコンペティションとはまるで違う。予備知識もデータもいらない。ただ素直に楽しい。体の底の方から「ウオーッ!」「スッゲー!」という叫びが飛び出してくる。すげぇでしょ、笑っちゃうでしょ、それでオッケー。FMXはそんなシンプルなモータースポーツだ。
 ライダーたちは観客を喜ばせるために飛ぶ。でも、何よりも自分たちが楽しい。ライダーの佐藤英吾もそんなフリースタイラーの一人だ。大柄な体でYZ250Fを操り、ダイナミックなトリックで魅せる。観客を盛り上げようと率先して声を出す。そう、エイゴは高いプロ意識の持ち主なのだ。


──オレ、もともと全日本モトクロスに出てたんですけど、やっぱジャンプが好きで。ビデオで観た本場アメリカのFMXの真似事をしたりとかしてるうちに楽しくなっちゃって。
 今も基本的にはレースは好き。でも、来年はもうレースに出ないでFMXに専念するって決めてるんです。全日本モトクロスに出るにはやっぱりスポンサーが必要。FMXと二足のわらじになって、中途半端な結果になることは許されない。プロライダーとしてレースに出る契約をするんなら、それに集中しなくちゃいけないと思うんです。
 その合間に、ただ自分が好きだからってだけでFMXをやってたら、そりゃスポンサーに失礼でしょ? その分の時間をトレーニングにあてるべきだし。
 じゃあどっちにするんだってことで、今の自分の気持ちに正直になると、やっぱりFMXなんです。
 怖いですよ。難しいしね。でも、そのスリルが楽しい。ケガはしょうがない。覚悟の上でリスクの高いトリックをメイクして、お客さんが盛り上がってくれりゃあ最高ですよ。
 お客さんが盛り上がってると、力以上のトリックを魅せたくなるんです。もっとでっかいワザを決めてやろうって。無難にまとめてもしょうがないからね。で、この間もムチャやって鎖骨折った。まだくっついてないんだけど、医者に聞いたら「キミは飛ぶのが仕事なんだろう?」って諦めてた。痛いけど飛びますよ。


 広島のイベント会場で見つけたエイゴは、底抜けに楽しそうな笑顔を浮かべていた。
 エイゴはライダーの他に、主催者としての顔も持っている。さまざまなイベントにFMXをジョイントさせたり、企画や運営、それにFMXライダーのコーディネイトまで行っているのだ。
 しかし広島では、エイゴはただライダーとして参加していた。飛んで、観客を盛り上げさえすればいい。その気楽さが、エイゴを笑顔にしていた。
 それでも時折、難しい表情でイベントの主催者と話し合っている。キッズバイクで遊ぶライダーたちに「メットかぶっとけよ!」と声をかける。
 どう見せるか、どう見られるか。エイゴは常にそのことを意識している。それは彼が、FMXを通じてオフロードバイク全体の魅力を広めたいと思っているから。ただトリックに感動してもらうだけでは、もう物足りない──。


──2年間アメリカに行ってた時に、お客さんを楽しませるプロ意識の高さを学んだんです。やっぱりプロスポーツである以上、見られてナンボ。見てくれる人を大事にしないと後がなくなっちゃいますからね。
 FMXは、モトクロスで一番すごさが分かりやすいジャンプだけを取り出したもの。オフロードのことを知らない人にも、アピールしやすいと思うんですよね。レースとは関係のないイベントで飛ばしてもらったり、音楽イベントとジョイントしたりすることで、ふだんオフロードバイクに触れることなんかない一般の方にも、こういうバイク、こういうスポーツがあるってことを分かってもらえる。
 それって結局は、モトクロスを知ってもらえるってことにつながる。オレはオフロードが好きだから、レースもFMXもどっちも盛り上がってほしい。そのためにオレらができることは、飛ぶしかないんです。
 今のメンバーだけで飛んでればOKかな、と思うこともある。一瞬だけどね。「いいよ、オレらだけ食えてれば」って。でも、それじゃいけないんです。オフロード界全体が盛り上がるために、オフロードがもっと根付くために、自分たちができることをやらないとね。


「オフロード、根付くかな」。エイゴにそう尋ねると、「根付くかどうかが問題なんじゃない。根付かせるんです」と言った。「そのためにオレはやれるだけのことをやる。何だってやってみないと分からないでしょう? やれば、自分の今の力が分かる。そしたら次にどうしたらいいのかも分かる──」。そして飛ぶ。飛び続ける。エイゴの未来への道は、空の中にあるのだ。


佐藤英吾
1978年10月30日生まれ/福島県出身
4才 兄の影響でバイクに乗り始める
9才 レースデビュー
14才 モトクロス東北選手権国内B級125cc/250ccクラスチャンピオン
15才 モトクロス東北選手権国内A級250ccクラスチャンピオン
17才 IA昇格
19才 モトクロス修行のため渡米。20才までの2年間を過ごす
21才 モトクロスギアブランド「WARPT」の代理店業を開始
22才 フリースタイルモトクロスを本格的に開始
23才 全日本モトクロス選手権IA125・SUGO第1ヒートで4位に

(2002年・Club YAMAHA MOTORCYCLE magazine・秋冬号に掲載)

2013年2月28日、練習中に事故死(トーチュウより)。

・有志による家族へのドネーション(寄付)サイト

・本人のブログ

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コメント

待ってましたGJ!最初読んだ時、え!?広島に来てたの!?て思ったら10年も前か~ あ~レース見に行きて~

投稿: msk2 | 2013.03.09 17:02

未だに冗談としか思えませんし今度大阪城でまたキメてくれると思ってしまうほど呆気なく亡くなってしまいました。
でも彼が日本にFMXをもたらしたことは消えないですよね。

投稿: R.I.P | 2013.03.09 22:37

R.I.Pさんの書き込み見なかったら知らないままでした…合掌

投稿: msk2 | 2013.03.10 06:07

大阪、すごく楽しみにしてたんですが・・・。昨年のMotoGPのときが最後の生エイゴになってしまいました。

投稿: jose | 2013.03.10 10:30

>msk2さん
そうなんです…。情報不足で失礼しました。リンク先など少しだけ加筆しました。残念ですね…。

投稿: ごう | 2013.03.10 11:14

>joseさん
オレも日本GPに行ってたんですが、仕事だとなかなかイベントを見ることができず、見逃してしまったのが心残りです。

投稿: ごう | 2013.03.10 11:16

>R.I.Pさん
まさに開拓者でしたよね。10年以上前、まだ20代半ばの若さででっかいビジョンを持っていたし、それを着実に実行していったカッコよさ、見習わなくちゃと思いつつ…。

投稿: ごう | 2013.03.10 11:18

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