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さよなら、右下腿両骨骨折

12月8日(水)朝に入院し夜にはブッスリと浣腸されたオレは、9日(木)昼に手術を受け夜は痛みにのたうち回って一睡もできず、10日(金)朝には痛みに耐えかねて座薬を投入してもらいつつも車椅子による移動を開始し昼には松葉杖でトボトボ歩き夕方には松葉杖なしでもヨロヨロ歩けるようになり、11日(土)にはビッコながらス…タス…ッタスタ…スタッ…ぐらいのペースにまで復調しそのまま自分で車を運転して退院した。

想像以上のスピード回復である。同じ全身麻酔での手術とはいえ、体に異物を入れるよりも、入っていた異物を取り除く方が、ダメージは少ないのだ。そういうものだ。

結局、我が肛門への砲撃は、浣腸および座薬の各1発、計2発で済んだ。チンコの先っぽの穴にビニール管を突っ込まれる脅威的強制排尿システム・導尿カテーテルも、今回はなかった。残念というかうれしいというかせっかくの機会だったのにもったいないというか何というか。

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↑退院直後の傷口はこんな感じ。一応モザイク入れたけど、かなりグロいのでクリックは自己責任で。

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↑オレの足に入っていた髄内釘。手前がヒザ側、奥が足首側。

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↑本体の全長は約30cm。フルチタン製、35万円也。誰か買わない?

21日(火)、バッコウのために病院に行った。傷口はホチキス留めだから、抜糸じゃなくて抜鋼と呼ぶのだ。待合室でボケーッと鼻くそをほじり、ほじった鼻くそをピンと飛ばしたり、ほじった指先をぺろぺろ舐めてしょっぱさに顔をしかめたりしていると、年配の看護婦さんに「高橋ツヨシさーん」と呼ばれた。

「あ、高橋ゴウならオレですけど」と手を挙げると、「あらヤダ、ゴウさんでしたか。失礼しました。いやねえ、フリガナが書いてあるのに、つい漢字だけで読んじゃって」とチャーミングに照れ笑いしている。

診察室に入り、包帯を外している間も、その看護婦さんはずっとそのことを言い続けていた。「すいませんねぇホントに。患者さんの名前を間違えるなんて、ホントに、ねぇ」「全然問題ないですよ。オレ、よくツヨシって間違えて呼ばれるんですよ。あと、タケシとか」「あらそう、やっぱり。そうよねぇ。でもね、ちゃんとココにフリガナ書いてあるのよ。なのについ漢字だけで、いやねぇホントに」

包帯とガーゼが取り除かれた。ホチキスの針が右足に13個、鈍く輝いている。剃られたスネ毛がそろそろ生えてきている。傷跡。ホチキス。まばらなスネ毛。汚ぇ足だ。

看護婦さんが、先の曲がったラジオペンチのような器具を、滅菌袋から取り出した。ホチキスを外すためのものだ。

そこへ主治医の山ちゃんが現れた。いつものようにサッパリとしている。カルテにちらっと目をやり「えーとバッコウですね」と言い終わる前に、ラジオペンチ状の器具を使ってパチンと1つめのホチキスを外す。

「ツッ!」

と痛がっても、山ちゃんは顔色ひとつ変えない。

「アッ!」
「イタッ!」
「ウッ!」

声を上げるオレなどいないかのように、淡々とホチキスを取り外していく。

「抜鋼が終わったら、もう来なくても大丈夫ですよ。あ、どうせバイクで転んでまた来るか」
「イテッ! イヤですよ、ハウッ! ぜってぇ来ない」
「しかしGOさん、バイクで転んでもケガしたことないんでしょ? それが不思議だよなあ」
「うまいこと、ウグッ! 転んでるから、イチッ!」
「砂利の上とか走ったら、たいてい転んで骨を折るはずなのにねぇ」
「……イツッ!」

痛いもんだからうまく反論できない。砂利って何だよ、砂利って。

山ちゃんは整形外科医で、バイクで転んで骨折した人を数多く治している。逆に、バイクで転んでも骨折しなかった人は、山ちゃんのところに来ない。つまり彼の中では、「バイク=転倒=骨折」なのだ。

オレの骨折の原因は、バイクではない。しかし山ちゃんは、オレが仕事でバイクに乗ることを知っている。転ぶ可能性があるということも。だから「どうせまた来るでしょう」なのだ。病院の皆さんは素晴らしい人たちばかりだけど、また浣腸されるのはヤダよ……。

チキチキという鋭い痛みに13回耐えると、右足に打ち込まれたホチキスがすべて取り外された。山ちゃんはイソジンをチッチと塗って消毒すると、いつも通りのクールさで、「普通に生活していいですよ。スポーツもOKです。じゃ」と、疾風のように去って行った。妊娠9ヶ月だというのにバリバリと働いている別の看護婦さんが、「あと1日だけ我慢してね」とバッコウ跡にガーゼを当て、包帯を巻いてくれた。

そしてオレは立ち上がった。
何も余計なものが付いていない足で。

素のままのオレの足。
もう何もないんだ!
喜びが染み出てくる。

「やった! 終わった!! 超うれしい!!!」

診察室で何度も拳を突き上げた。2008年11月9日の骨折以降、常に右足の中に異物があって、何かあったらどうなるか分からない緊張と我慢の2年1ヶ月半だった。押し寄せてくる猛烈な開放感に、「ああ、オレはオレなりにしんどかったんだな」と気付いた。

何度も「超うれしい! すっげぇうれしい! マジでうれしい!」と繰り返すオレに、身重の看護婦さんが「よかったね」とクスッと笑った。「また来てくださいね」「冗談じゃないッスよ。2度と来てやんない」と言いながら、オレは診察室を出た。ちょっとだけ寂しかった。

看護婦さん、看護士さん、その他病院のスタッフが、とても気持ちいい人たちばかりだったのだ。今回の骨折に関わる3度の手術、3度の入院にあたって、オレは一度もイヤな思いをしなかった。患者と病院職員の皆さんの間がとても近くて、かといって馴れ合うわけでもなく、ちょうどいい距離感なんだ。

リハビリを担当してくれたのは、ホーネットに乗る女性ライダーだ。2年前、22歳の彼女は理学療法士になりたてだったが、オドオドした素振りや不安げな表情が一切なく、堂々としていた。そして情け容赦なくクソ痛いリハビリを仕掛けてきやがるのだが、ビビらず動じない彼女の様子に、かえって安心できた。負けず嫌いでめんどくさがり屋というオレの性格を見抜き、適度なツンデレ具合でリハビリをコントロールしてくれた彼女に、乾杯。

そして主治医の山ちゃんである。いつも颯爽サッパリキッパリハッキリしていて、オレが質問している途中でも平気でどっかに行ってしまう風のような先生だが、湿っぽいところや優柔不断さがなく、「僕は折れてる骨を治す。以上!」という割り切り感が非常に信頼できた。

現状では、まだヒザまわりに痛みが残っていて、左足と同じレベルまで曲げ切ることができない。足首の動きは硬いし、右足の筋肉の落ちっぷりは情けなくなるほどだ。それでも抜鋼から1週間が経ち、柔らかいマットレスの上ならギリギリ正座ができるようになった。

きっとほとんど後遺症は残らず、骨折していたことすら忘れてしまうだろう。
けれど、オレは決して忘れない。

……。
……何をだっけ?

ああ、そうだ。
いろんなことを。
本当に、いろんなことを。

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コメント

完全治癒おめでとうございます。

チタンステー、シフトリンクかリザーバータンクステーに使えそうなので、お譲り戴きたいのですが、30万は高いな・・・

つか、自分の足にはまだ2本入ったままだった^^;

投稿: リベット | 2010.12.27 17:42

おめでとうございます。お待ちしておりました!
入院した為に退院後もご多忙かとは思いましたが 正直心配してしまいましたよ。

本当に良かった~!

また引き続き楽しく拝見させて頂きますgood
サンバー最高!

投稿: 眉 | 2010.12.27 22:05

城行こう!城!

投稿: 関根 | 2010.12.28 09:27

ヨカッタヨカッタ。

無事退院おめでとうございます。

しかしブログタイトル「浣腸された」

これが彼の最後のエントリーとなった・・・にならなくてホントにヨカッタ。

投稿: えびた | 2010.12.28 13:55

>リベットさん
ありがとうございます。30万円じゃなくて、35万円ですので、何卒よろしくお願いします。状態良好ですよ! げ。リベットさんも足に異物が? 異物怖ぇ〜。お気を付けて……。

投稿: ごう | 2010.12.31 16:33

>眉さん
退院の時、サンバーの運転がヘタクソで笑えました。だって痛くて足動かせないんだもん。今はもうバリバリですが、サンバーをスッ転がさない程度に自重するつもりです。 

投稿: ごう | 2010.12.31 16:35

>関根さん
ヤバイヤバイ。城はヤバイから。

投稿: ごう | 2010.12.31 16:36

>えびたさん
万一のことを考えて「浣腸された」を最後にしといたんですけどね〜。思いがけず無事に生還してしまいました……。

投稿: ごう | 2010.12.31 16:37

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