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フロプェッショナル サンバーの流儀

高橋剛は、いつものようにサンバーを走らせていた。

圏央道の交通量は、少なかった。

「ラジオでも聴くか」

AMラジオのスイッチに手を伸ばした、その瞬間だった。
高橋の右足が、異変を感じた。

エンジンが、反応しない。

ゆっくりと、アクセルを踏んだ。
ガクガクと車体が揺れる。
エンジン警告灯が、激しく瞬いた。

高橋は、冷静だった。

「そうですね、まあ冷静っちゃあ冷静でしたけど、2日前にも起こったことだったんでね。心の準備は、まあ、できとったわけですよ」

落ち着いて、ミラーを見た。
鼻毛が、飛び出ていた。
他の車は、いなかった。

減速していくサンバー。
70km/hを、下回った。
高橋は、決断した。
ハザードを、出した。

「ええ、確かに鼻毛は出てて、他の車はおらんかったんですよ。でも、何があるか分からんのが圏央道ですから。念には念を、ハザードにはハザードをってヤツですよ」

何を言っているのか、分からなかった。
高橋は、路肩にサンバーを寄せた。

クラッチを切った。
エンジンは、止まらなかった。

惰性で路肩を走行しているうちに、警告灯が消えた。
転機だった。

高橋は、そっとアクセルペダルを踏んでみた。
エンジンが、反応した。

「あー、あの瞬間ですか。覚えとりますよ。何しろ、現場に向かうところでしたからねぇ。帰りならまだしも、行きですから。『かかれ、かかってくれ』と、こう、藁にも祈る思いでしたわ」

それを言うなら、藁をもつかむ、だった。
しかし、藁への祈りが通じた。
サンバーのエンジンは、復調した。

それで終わりではなかった。

「現場仕事を終えて、圏央道を逆方向に走っとる時ですわ。やっぱり何が起きてるのかはっきりしないのは気持ちが悪くてね。どういう時に問題が起きるのか、再現してみようと、こう思ったわけですよ」

行きと同じ条件を、揃えてみた。
右足に、違和感があった。
再び、エンジントラブルが起きた。
高橋の頬を、涙がつたった。

「……ええ……。ごめんなさい、あの瞬間はねえ……。……昔、ウィークエンダーって番組で、『それでは再現フィルムをどうぞ』ってお姉さんが言うのを、待ち構えてたもんですよ。……必ずエロシーンがあるから。……そういうものでしょう?」

エンジントラブルの再現を、エロシーン満載の再現フィルムに例えた。
それほど、今回のトラブルは、深刻だった。

エンジン警告灯が、点灯した。
ほどなく、エンジンが完全に停止した。
すかさず、ハザードを出した。
もう、路肩に停まるしかなかった。

「そりゃね、イヤなもんですよ高速道路の路肩に停まるのは。……っていうか、今まで停まったことなんか1回もないんじゃないかな。何しろトランポの野生児、サンバーだからね、加速して合流すんのも命懸けなんですよ。そこを分かってもらいたいわけですよ!」

妙に興奮した、高橋。
自ら振った、エロシーン満載再現フィルムの話題が、原因だった。
自給自足だった。

路肩にサンバーを停め、ひと息ついた。
イグニッションキーを回した。
エンジンが、息を吹き返した。

何事もなかったかのように、アクセルワークに反応した。
車列が切れるのを見計らって、フル加速で本線に合流した。
長いトンネルに入った。
その直後のことだった。

エンジンが、再び不調に見舞われた。
トンネルの中だった。
路肩は、なかった。
困った。

ここでエンジンが完全停止すれば、自分の身はもちろん、他車にも危険を及ぼす。
「頼む、止まらないでくれ」
必死で、藁に祈った。

その祈りは、届かなかった。
再び、エンジンは完全停止した。

惰性で動くサンバー。
高橋は、選択に迫られた。

「うーん、どうすっか、と思いましたですねえ。何せトンネル内でしょう? 路肩はないし、エンジンは止まっとるし、スピードはどんどんどんどん、どんどんどんどん、ええ、そりゃあもう、どんどんどんどん落ちていくわけですよ。いろんなことが、じんま疹のように頭の中を駆け巡りましたよ」

走馬灯のことだった。
じんましん。そうまとう。
「ま」しか合っていなかった。

後ろに車がいた。
すぐにハザードを出し、軽くブレーキをかけて、何度かブレーキランプを点滅させた。

それと同時にクラッチを切り、4速で「惰性押しがけ」を試みた。
かすかに、エンジンが反応した。

ごくわずかに、車速が増す。
すぐにエンジンが止まり、減速する。

惰性押しがけ、エンジン停止を繰り返しながら、車速は少しずつ落ちていった。
後続車は、高橋の異変に気付かず、後ろについたままだった。

「ミラーで見てる限りでは、いらついてる風でもなかったですねえ。私のサンバーと一緒になって減速してるちゅう感じでした。幸い、さらにその後ろはいなかった。でも、危ないことには変わりないですから」

その時、高橋の目が、鷹の目になった。
ごくわずかな空間を捉えた。
非常駐車帯だった。

「とりあえず、後続車に迷惑をかけずに済む、と思いましたねえ。逃げ込むように駐車帯に入りましたですばい」

熊本弁だった。

駐車帯で、ひと息ついた。
イグニッションキーを回した。
エンジンが、息を吹き返さなかった。
甘くなかった。

ふた息め。
まだかからない。

みつ息めをつき、イグニッションキーに、手をかけた。
その瞬間、放送が流れた。
「トンネル内は駐停車禁止である。速やかに退去されたし。なお、故障の場合は……」

やばい監視されている。
イグニッションキーを回す高橋の手に、力が入った。
その力が、奇跡を起こした。
エンジンが、息を吹き返した。
過去最高級のスムーズかつクイックかつエクセレントな加速で、トンネルを後にした。

エンジン停止より、放送にビビッた高橋。

「そらそうですよ。だってウィークエンダーには、泉ピン子が出てたんですよ! ピン子、そして再現フィルムのお色気シーン。ピン子、そして、エロス。いいですか? ピン子、エロス、ですよ。このギャップが……」

結局、サンバーは、より、精密な、検査を、受ける、ことに、なっ、た。

高橋にとって、フロプェッショナルとは……。

「やっぱりピン子、エロス。ピン子、エロス。このギャップが生む……」

(完・再放送の予定はありません)

仕事先で、よく「ブログ読んでますよ〜」と言われる。そんな時は必ず「あ、じゃあにほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへあのボタン、クリックしてくれてる?」と尋ねる。100%の確率で、「ううん、押したことない」。なぜじゃあ! なぜ押さないんじゃあ!「なんか、怖いことが起こりそうで」起こら、な〜い! 「なんか、ごうが得しそうだから」得、しな〜い! 何でもないわけですよ、ランキングも気にしてないし。「じゃあ押さない」いやいやいや。まぁまぁまぁ。指圧の心は母心、にほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへ押せば命の泉ピン子。カーッカッカッカ。by 浪越徳治郎先生。

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コメント

トンネルは怖いわ・・・生きた心地しないですね(>_<)
ちゃんと直るとイイですね。燃料系っぽくないですか?

投稿: ジョン19 | 2010.07.05 09:47

go!さん、こんばんは。

トンネルでの急旋回、ではなく休停止、でもなく急停止、めちゃめちゃ恐ろしいですね。昔々、Ninja750で快調に走っていた北海道の国道トンネルで突然エンジンが・・・。同じ感覚でした。「路肩無い~」「フェンダーレスキットで反射板無い~」「追突されて死ぬ~」・・・って所に奇跡の待避所が。

私のNinjaはここから二度と動きませんでした。根性無しです。

路肩の無いトンネル内を徒歩ダーになりました。5回以上死にそうになりました。今では良い(?)思い出となっており、笑い話として今後、私がこの世に存在する間、人に話し続けるでしょう。

失礼しました。エンジンかかって良かったですね。さすがサンバーっす!

投稿: neko男爵 | 2010.07.05 23:08

惰性で走行していれば押しがけが可能なんですね。
高速でエンストした時は参考にします(しないのがベストですが)

投稿: まぬ | 2010.07.07 11:05

>ジョン19さん
すんげー怖かったよ! たぶん電気系もしくはホントにエンジンがブッ壊れる前兆かと……。

投稿: ごう | 2010.07.07 12:59

>ぬこ男爵さん
バイクでトンネル内急停止! 死んじゃいますよ。「この世に存在する間、人に話し続ける」ネタって、ひとり一個は必ずありますよね!

投稿: ごう | 2010.07.07 13:00

>まぬさん
可能です! でも高速の場合は、ギアを間違えるとエンジンブッ壊れると思います。気を付けて……。ってオレか!

投稿: ごう | 2010.07.07 13:01

こんにちは。「サンバー、高速、エンスト」でたどり着きました。
全く同じ症状で、ヒーターかけて助手席下からラジエターに水掛けながら帰ってきました。
原因分かりましたでしょうか?うちはお手上げ、特に首都高は恐怖です(>_<)

投稿: ニコニコ | 2010.08.02 18:54

>ニコニコさん
後日談を書こう書こうと思いつつ、「ま、いつだって『後日』だし。ブログに〆切ないし」とのんびり構えてました。実は、カムセンサー(3000円弱)の交換で、今のところ症状は治まっています。必ずソレかどうかは分かりませんが、ご参考までに。しかし、水をかけながらの帰還。想像するだけで涙が出ます。ご苦労さまでした…。

投稿: ごう | 2010.08.02 19:11

ありがとうございます!
カムセンサーですか!!
他にO2センサーという意見もあるので、両方交換してみます。
車買い替えずに済みそうです。ありがとうございました!!

投稿: ニコニコ | 2010.08.02 23:24

>ニコニコさん
いいですね、「ニコニコさん」って。カムセンサーは2700円ぐらいでしたが、「保証で何とかなりました」とタダでした。まだ症状は出ないですね〜。ホントに直っちゃったのかな。ちょっと寂しいな……。

投稿: ごう | 2010.08.12 15:50

mixiから来ました

サンバーのエンジン「EN07」ですが、カムセンサーとクランクセンサー不良によるエンストはよくあることです。
エンジンが温まって(完全暖気状態)くると、その熱でセンサーが反応しなくなってエンストします。

サンバーではまだ経験がありませんが、同じエンジンを積んだプレオで数台カムセンサー交換で直った経験があります。
もちろんその後は問題なく走っていますよ。

投稿: 通りすがり | 2010.08.16 22:01

>通りすがりさん
有益な情報ありがとうございます! このブログ、バイク乗りよりサンバーライダーの方が多いんじゃねぇかという気もするので、今後ともよろしくお願いします。

投稿: ごう | 2010.08.18 13:59

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