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さよなら、さいとうさん

ライターの斉藤和弘さんが、事故で死んでしまった。

さいとうさんと、死……? 全然結びつかないよ……。

ライター同士が仕事を共にすることはめったにないが、さいとうさんとは不思議とそういう機会があった。大日本印刷の出張校正室では、深夜、赤ペンを握りながらくだらない話をして笑い合った。一緒にハーレーに乗り、ツーリング取材に出かけたこともある。

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ライターふたりで取材に出かけるなんて、とても珍しいことなので、強く印象に残っている。

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さいとうさんは、いつもクニャッとした笑顔を浮かべていた。柔らかい文章は、さいとうさんそのものだった。ひらがなが多くて、読まずに眺めただけでも「あ、さいとうさんの仕事だな」と分かった。

意外にもオレの仕事をよく見てくれていた。先輩なのに、押しつけがましいことは言わない。ちょっとした感想を控えめに伝えてくれる。メガネの奥の目は思いがけず真剣だった。ツーリング取材の時は、ふわっと相手の懐に入ってしまうさいとうさんを見て、人見知り全開のオレはうらやましく思いながら、勝手に勉強させてもらっていた。

数日前まで、オレはヤングマシンの原稿を抱えていた。猛烈にタイトなスケジュールの割には分量が多く、他の取材との兼ね合いもあって、とてもではないが全部は書き切れなさそうだった。心配した編集部の勧めもあって、本文は書くけれど、キャプション書きは途中までで諦めることにした。たいていは意地でも書き切るが、今回ばかりは意地でどうにかなるものではなかった。

キャプションとは、写真や図に付くちょっとした説明文のことだ。文字量の少なさに対して、時間と手間が結構かかる。文字量が少ないということは、それだけ原稿料が稼げない。ライターにとっては、あまり旨みのない仕事だ。

「誰がキャプションを書くことになったの?」と編集部に聞くと、「手分けしますが、さいとうさんにもお願いしています」とのことだった。先輩のさいとうさんに尻ぬぐいをさせてしまうようで、居心地が悪かった。でも、さいとうさんなら「も〜、しょうがないな〜」と、クニャッとした笑顔で許してくれるかな、と思ってもいた。

いつかお礼するつもりだったのに、その仕事を片付けて、さいとうさんは逝ってしまった。

なぜ、さいとうさんが?

さいとうさんが事故に遭った日、オレもバイクに乗っていた。

信じられないぐらい悪い偶然が重なって、死に結びついたとしか思えない。そこに必然なんかなかったはずだ。……必然だったとしたら、なおさら納得できないんだ。

オレが事故で死んだら、オレ自身はすごく納得できる。乗っていたのがサンバーだろうがインプレッサだろうがバイクだろうが、「やっぱりな」と思う。「やっぱオレってバカだったんだな」と。

皆さんもきっと、「まぁ、ごうならやりかねねぇな」「しょうがねーなー、まったくよー」と納得できるだろう。実際、さいとうさんの話を何人かとしたが、決まって「ごう、おまえはくれぐれも気を付けろよ」と言われた。通り一遍の挨拶ではなく、心から心配されているのが伝わってきた。

ひとつだけ言っておきたいのは、納得はしても、「好きな乗り物で死んだんだから、きっと本望でしょう」とだけは言ってほしくない、ということだ。好きな乗り物だからこそ、オレはそれで死にたくない。

……それはともかく。

全方位的にやっちゃいそうなオレが意外とやらずに、全然やっちゃわなさそうな斉藤さんが事故に遭う。分からないものだ。

でも、オレだって、これを読んでるあなただって、きっといつだってスレスレの所にいるんだろう。バイクに乗っている、いないに関わらず。

何が起きるか分からないし、何が起きてもおかしくないんだな……。

あの日は、とても暑かった。同じようにヘルメットの中で汗をかきながら、同じ色の空を見ていたのかな。きっと今頃さいとうさんは、「あれー、ここどこだろう? なんかこれおいしそうだな〜。あ、あのひとどっかでみたことある〜。こんちは〜」なんて、クニャッと笑っているのかな。

なぜ、さいとうさんが……?

悔しいな……。

ホントに悔しい。

さよなら、さいとうさん。一緒に走れてよかった。

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ダメだよ、死ぬなんて。

金曜日のお通夜、土曜日の告別式とも、8耐取材と重なってしまうので行くことができない。鈴鹿サーキットで、斉藤さんを思おう。……こうして思い出の中に閉じ込めていく人が増えるのは、やりきれないけれど。

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コメント

goさん、こんばんは。しんみりと読ませていただきました。

自分も経験あります。前日に、ちょっと寄り道してお話したバイク屋の店主、次の日の夕方のTVニュース、テロップで「死亡」の後にくっついたその方の名前を目にした時、完全に凍りつきました。事故には全く結びつかない方なんですが・・・解らないものです。もうあれから10年以上経ち、今はその店も無くなり、記憶の中に存在するのみとなりました。

さいとうさんのご冥福をお祈りします。

投稿: ねこ男爵 | 2010.07.21 23:42

>ねこ男爵さん
まわりにはバイク乗りばっかりなので、ニュースを見るときはいつもドキドキします。みんな無事がいいですよね。

投稿: ごう | 2010.08.02 19:07

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