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サンバー13号、奇跡の生還

宇宙圏央道ハイウェイを巡航中、突然、サンバー13号が失速した。

宇宙速度制限装置が作動したかのように、ガクガクと機体が揺れる。

とっさに、無数のメーターとボタンが並んだ計器類に目を走らせる。

速度計、80宇宙キロメートル。宇宙速度制限装置が効くはずはない。液体酸素&水素燃料計、ほぼ満タンOK。水温計、いつも通りでノープロブレム。タコメーター、付いていない。

燃料噴射ペダルを右足でペコペコッと踏んでみる。

ガガガッ、ガガッ。ゴ……。

反応が徐々に薄れていく。為す術はない。

"Houston, I've got problem."

ヒューストソ・ジョンリン宇宙センターの応答はない。コクピットに響くのは、私がリクエストしていた日本のAM放送「くにまるワイドごぜんさま」だけである。
もう地球には戻れないのか……。

いや、まだ諦めるべき論理的根拠はない。科学者として、全力を尽くそう。

他の宇宙船に追突されるのが怖い。後方視認鏡を見る。横幅がサンバー13号の3倍はあろうかという超巨大宇宙貨物船サカイ引越センター号が、パンダのマークも勇ましく、猛烈な勢いで迫ってくる。

宇宙方向指示器を両側点滅させ、軌道修正装置を面舵一杯、間一髪で宇宙貨物船サカイ引越センター号をかわしながら、宇宙ハイウェイの路肩に寄る。

寄せながら、私は、十数年にわたって我がサイフ内に潜みつつ、ただの一度も日の目を見ることがなかった全日本宇宙救援隊の会員証を確認する。

あった。

サンバー13号搭乗の際、周囲には反対されたものの、サイフを持参してよかった。やはりハンカチと貴重品はいかなる時も携帯すべきだ。

日本宇宙救援連盟、略してJAFと書かれたプラスチックカードの硬質な感触が頼もしい。

「JAF Mateのためだけに、ずっとおまえに投資し続けてきたんだ。今こそ役に立ってもらうぞ」

速度を落としながら惰性で進む。エンジン警告灯が瞬く。燃料噴射ペダルをいくら右足で踏んでも反応はない。

私はエンジンを諦め、完全に停止させた。最悪の事態に備え、左足で回転動力伝達ペダルを踏み、切っておく。

しかし、宇宙ハイウェイの路肩で停まると、少々厄介なことになるぞ……。

私は科学者である。科学的に立証されない限りは、神の存在さえ認めない。しかし、この時ばかりは、神も存在するのだと直観した。

こともあろうに、前方約500宇宙メートル、11時の方向に惑星アキルノが見えてきたのである。しかも大気圏ゲートに向かっては、左旋回しながら下るだけでよい。

「バーナーオン、サンバー! バーナーオン!」

科学者であることをすっかり忘れ、私は燃料噴射ペダルを右足で何度も踏みつけながら、そう叫んだ。

「おっと、エンジンは停止させていたのだったな」

私は苦笑いした。素早い加速は望むべくもないが、惑星アキルノの重力に引かれて、徐々に速度を上げるサンバー13号。すごいサンバー13号! やはりただものではないな!

こうなると、空力が考慮されていないサンバー13号の箱形形状が気になる。私にできることはないだろうか。

そうだ!

コクピットで思いっ切り肩をすくめて、細身になってみる。私の計算によれば、これで若干空気抵抗が減るはずだ。

スルスルスル……。計算通りだ! サンバー13号はますます加速する。

しかし、まだ問題はあった。左旋回である。舵角をつけると摩擦が増し、速度が落ちてしまうのだ。

チャンスは1回しかない。なるべく軌道修正装置を操作しないように、宇宙壁ぎりぎりをかすめ、極力ゆるやかに左旋回しながら大気圏ゲートをめざす。

大気圏ゲートが迫る。突入角度は完璧だ。

しかも、サンバー13号には世界最高峰最新鋭無線式自動料金収受システム・ETCが搭載してある。停止することなく大気圏ゲートをくぐれるのだ。

すでにサンバー13号は十二分に加速している。制動装置を軽く作動させ、強大なストッピングパワーを左足で絶妙にコントロールしながら、20宇宙km/hの猛烈な勢いで大気圏ゲートに突入する。

炎に包まれ、揺さぶられるサンバー13号。外殻である厚さ0.2mmの鉄板が1500度に熱せられる。手動開閉式窓ガラスからは真っ白い光だけが見える。見たことのない、完璧な白さ。

私は、サンバー13号がゲートに衝突しないよう、軌道修正装置をしっかりと握りしめながらも、その美しさに感嘆してもいた。

ふっと振動が収まった。大気圏ゲート、通過である。

惑星アキルノ大気圏ゲート脇の駐機場にサンバー13号を軟着陸させると、私は宇宙服を着込み、厚さ15mmの手動開閉式ドアを開け、コクピットを抜け出した。

サンバー13号のエンジンは、後部衝撃緩和装置内に収められている。緩和装置を手動で開け、エンジンを確認する。

エンジンは、しっかりと、そこに、あった。

エンジンがあるなら、何とかなるだろう。科学者たるもの、常に楽観的でなくてはならない。

コクピットに戻ると、私はイグニッションをオンにした。今の私にできることは、これしかない。

チュチュウ、ウウ、ウ。

スパークプラグが火花を散らす。かかれ。かかってくれ。おお、神よ。ああ、仏よ。生きとし生けるものたちよ。サンバー13号に元気を分けてけろ……!

チュウ、ウウ、ブロン、ブロロロン!

エンジン再始動、成功!

計器類に目をやる。警告灯は点灯していない。燃料計、水温計、オールグリーン。タコメーター、付いてない。

さあ、任務に戻ろう!

問題発生から減速、そして再始動まで、わずか4分17秒。この程度の遅延なら、任務には何の支障も来さない。私は、サンバー13号を再び宇宙ハイウェイの軌道に乗せた。

順調に飛行を続けるサンバー13号。しかし、原因は不明のままである。慎重になるにこしたことはない。私は宇宙法定速度を守り、宇宙ハイウェイを進んだ。

宇宙時間午後4時半を過ぎ、ひと通りの任務を終えたところで、別の任務に就くことになった。YSP系惑星フジヨシダに立ち寄り、貴重な資料を採取するのだ。

その資料とは、二輪型宇宙カモシカ・セローである。

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採取した。

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後方視認鏡を取り外すだけで、サンバー13号のペイロードベイは、二輪型宇宙カモシカ・セローを難なく飲み込む。トランポとしての機能は目を見張るものがある。

エンジンは相変わらず快調だ。しかし、ようやく連絡の取れたヒューストソ・ジョンリン宇宙センターの飛行主任に確認したところ、「データ洗い出しのため、速やかに帰還されたし」とのことである。

宇宙ハイウェイを戻り、ジョンリン宇宙センターに帰還する。ダイアグノーシス機能によりデータを確認したが、異常は発見されなかった。技師らによると、とあるセンサーが異常を来している可能性があるとのこと。

「ま、エンジンそのものに問題はないし、大丈夫です。センサー異常はまれに起こるんですが、その場合は、エンジンが冷えりゃまたかかるようですよ。エンジンにパーツクリーナーを吹きかけて冷やしてもいいし」
「おいおい、そんなことしたら、発火すんじゃないか?」
「ちげぇねぇ」
「わっはっはっは」

宇宙船サンバー13号を、まるで軽自動車のように取り扱う彼ら。この技師たちの肝っ玉に、私は感服する。

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感服ついでに、セローを搭載したまま、エンジン潤滑油をWAKO'S製TR(トリプルアール)に交換。さらなる飛行に備えた。

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我がサンバー13号の左隣に並ぶのは、飛行主任の個人所有機。実に幸福な光景である。

結局、原因は究明されないままである。そして明日のフライトは、宇宙カモシカ・セローを再びYSP系惑星フジヨシダに無事返却するという重責を背負っている。

私はサンバー13号を信じる。サンバー13号なら大丈夫。絶対に私を裏切るようなことはしない──。

そして私は、日本宇宙救援連盟、略してJAFと書かれたプラスチックカードを、コクピットの分かりやすい場所に置いた。

エンジン停止時の模様は、全然リアルタイムではないし、ちょこっとではあるが、私のTwitterでも確認できる。ぜひアクセスのうえ、このボタンにほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへの連打をお忘れなきよう。つか、Twitterはいつやめるか分かんないから、フォローはお早めに。にほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへクリックもお早めに。確定申告もお早めに。オレか。あ、いや、終わらせてあるわ。何このつぶやき感。やな感じ〜。

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コメント

Japan Astronautic rescue Federation。

おお~、頼もしそうな名前だ。
サンダーバード国際救助隊みたいなのが来てくれるのか。

宇宙カモシカ・セローも飼ってみたい。

投稿: ほり | 2010.07.03 15:20

フォローした

投稿: Hide | 2010.07.03 21:47

go!さん、こんばんは。neko男爵のHNいただきました、nekoGTです(笑)

さて、何が起こったのか???ビックリしましたが何でもなかったようで(?)安心しました。でも恐怖は十分伝わって来ます。似たような経験をNinja750で味わった事が・・・。この話はまた次回にいたします。

投稿: neko男爵 | 2010.07.05 23:00

>ほりさん
おっ、確かにJAFだ……。そう、サンバーダードみたいのがズゴゴゴゴッと助けに来てくれるんです。

投稿: ごう | 2010.07.07 12:56

>Hideさん
し返した。

投稿: ごう | 2010.07.07 12:57

>ぬこ男爵さん
あーっ、なんだ次回か〜!!

投稿: ごう | 2010.07.07 12:58

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