« 骨折の実際 | トップページ | 松葉杖の真実 »

荷重をかけろ!

バイク同様、頸骨骨折においても重要なのは荷重である。

1月13日には、荷重訓練が始まった。訓練といっても大げさなことをするわけじゃない。要するに折れている右足を着き始めるのだ。初日の荷重は10kg。体重計のある人は、右足だけ乗っけて10kgにしてみてほしい。右足様をそっと置かせていただきます、といった程度だということが分かるだろう。それでも、2ヶ月4日ぶりの着地は、やっぱりすげぇうれしかった。

足を着くことで、骨折部位の上下方向に圧力がかかり、骨癒合が促進されるという効果もあるらしい。うーむうれしい……。

以降、1日あたり約2.5kgずつ荷重を増やし、3週間後、すなわち2月3日には全荷重まで持っていくプログラムだ。全荷重とは、全体重を片足で支える状態。歩く動作を分解すると、必ず片足で立っている瞬間がある。つまり全荷重になると同時に松葉杖なしで歩けることになる。さようなら松葉杖。

1月20日には、半荷重まで到達した。オレの体重は61kgだから、30.5kgの荷重をかける。松葉杖を使わずに、両足で立つことができるのだ。すっく、と立つことの素晴らしさ! 文字通り三十にして立つ! ビンビンである。

が、リハビリルームの機械で測定すると、真っ直ぐに立っているつもりでも、どうしても折れていない左足に体重がかかっている。自然と右足をかばっているのだ。なんだよ意外と優しいんじゃん、オレ。

などとノンキなことは言っていられない。フンヌ! と、かなり右足に体重を乗せていったつもりで、ようやく半荷重だ。今現在は50kg弱の荷重をかけているのだが、それこそもう、「スネ折れちまえええぇぇぇぇっ! 骨砕けちまえええぇぇぇぇっ!」とばかりにフンヌフンヌフンヌと思いっ切り踏んづけないと、無理なのだ。本当に怖い。荷重をかけるのって、すげぇ怖いのだ。

ところが、いったん50kg弱の荷重をかけてしまえば、「あり? 意外と平気じゃん」と、どしどし体重を乗っけて、今度はだいたい荷重をかけすぎる。リハビリの先生には、カルテに「過荷重傾向」と書かれてしまった。あんまり調子こいていると、骨がズレたりするらしい。

最初は怖い。今までより大きな荷重をかける最初の1回は、本当に怖い。右足が着地した瞬間にバキャッと骨が折れた時のバッドイメージが残っているから、なおさらだ。しかし1回かけてしまえば、すっと馴染む。どんどん安定していく。松葉杖で歩くにも、しっかりと右足を使えている手応えがある。何しろ筋肉痛が起こるんだぜ!? 右足が着地していなかった2ヶ月4日の間は、当然、筋肉痛もあり得なかった。何もかもが急速によくなっていくと、体感できる。

その「最初の1回のフンヌ!」が、どれだけ大事なことか。荷重という言葉を使っているから余計にそう感じるけど、こういうプロセスが本当にバイクに似てるなぁ、と思う。ズバリ、「バイクでスポーツする」というブログタイトルを掲げているが故の、強引なこじつけなわけだが。

サーキットを走り始める前は、荷重なんて意識していなかった。用語として理解はしていても、上っ面だった。サーキットを走るようになって、少しずつ荷重をかけられるようになり、その意味も体で分かってきた(まだまだ途上ですが)。

荷重をかければかけるほど、バイクは安定する。簡単かつ乱暴に言ってしまえば、速く走れば走るほど、バイクは安定していく。レースは、最も速いライダーが勝つ。当たり前だと思う? オレはそうは思わない。実はすっげぇことだと思う。だって、速く走るって、普通に考えればリスクは高くなると思うじゃん。それなのに、一番速い人が転ばずに勝っちゃうんだぜ?(相当に乱暴な考え方だけどさ……)

速く走ることは、リスクを高めることとは違う。まったく違う。逆だ。速く走れば走るほど、リスクは減る。最も速いライダーが誰よりも先にチェッカーを受けて勝つことが、それを端的に表していると思う。

MotoGPを見ていてつくづく思った。今、最も速いバレンティーノ・ロッシの走りが、最も安定している。見かけ上は、非日常的であり得ない異常な領域に踏み込んでいくほど、物事が安定するんだ。

その「異常な領域」に踏み込む時に最大の妨げとなるのは、自分の心だ。そいつさえ乗り越えられれば、(もちろん物理的な限界の範囲内で)安定した世界が待っている。

足は、「着いてもいいよ」と言っている。何しろ骨より頑丈な(たぶん)鋼鉄棒が入ってるんだから。バイクは、「もっと速く走っていいよ」と言っている。何しろ筑波で言えば1分フラットを切って走っても大丈夫なタイヤを履いてるんだから。

恐れない。気負わない。おごらない。おもねらない。妥協しない。卑下しない。甘く見ない。フラットでクリーンな意志さえ持っていれば、異常な領域でもそれを保ち続けていられれば、あとは何とかなるんじゃねぇか? と思うんだけど、それがひたすら難しい……。

松葉杖が取れるまで、あと4日(の予定)。その時オレは、すんなりと歩きたい。

にほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへ
↑バイク乗りてぇ。サーキット走りてぇ。松葉杖が取れる=全荷重=オレの場合61kg=片足で立てる=歩ける。しかし飛んだり跳ねたり走ったりすれば、全荷重以上の荷重がかかる。サーキット走行時は、結構な力でステップを踏んづけているから、たぶん瞬間的には全荷重以上かかっているだろう。怖いよう。それにとっさに右足でバイクを支えられる自信もない。……やってみれば「何てことないじゃん」ってことかもしれない。だいたい多くの人に「髄内釘入れたの? ふうん。レーサーならとっくに走ってるね。レーサーなら」と言われる。しかしさ。怖ぇんだよ。怖ぇんだって。それこそ、「理想的な意志」を持てずにいるんだ。まぁ、松葉杖が取れたら、ちっさいバイクのちょろちょろ乗りから始めようかと。……ああ、こんなヨワヨワさで、3月始めの筑波ロードレース選手権TC600クラスに出られるのかな? クリック数次第じゃねぇか? いや、こればっかりはな……。

|

« 骨折の実際 | トップページ | 松葉杖の真実 »

コメント

どもども。

>>3月始めの筑波ロードレース選手権TC600クラスに出られるのかな?

悪いことは言わないんで、やめといた方がいいと思いますよ。
髄内釘が曲がったら悲惨ですよ・・・

投稿: webmaster | 2009.01.30 22:10

>webmasterさん
確かにかなりヤバそうですね……。主治医いわく「大手術になる」とのこと。大手術……。憧れなくもないけど、やっぱもういいや……。

投稿: ごう | 2009.02.03 22:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91489/43906264

この記事へのトラックバック一覧です: 荷重をかけろ!:

« 骨折の実際 | トップページ | 松葉杖の真実 »