« 決めるのはオレだった | トップページ | 足に何か付いてた »

麻酔に勝った

手術前夜、萌え系メガネッ子看護婦さんにぶっすり浣腸されたオレ。

男の子なら誰もが妄想するようなセクシー気分にはまったくならず、する側も、される側も、淡々とした作業だった。そんなことより、負けず嫌いのオレとしては極限まで排便をガマンし、浣腸→排便耐久レース最長記録を達成したかった。

が、無理だ無理。「ハイ、終わりましたよー」と言われた数秒後に、もンのすげぇ激しい便意に襲われまくりである。車いすでトイレに駆け込みまくり、着座しまくった瞬間に轟きまくった排便音は、あたかも雷鳴のようだった。こんな音が人体から発せられていいのだろうか、と疑問に思うほどの轟音。「オレこのまま発射?」と、ロケット気分を味わうほどだった。

しかも、「カンチョー」という言葉から想定するように、スルスルスルーとクソが出切ってハイ終わり、というような生易しいものではなかった。前半こそカイチョーに排便されたものの、後半は脂汗をダラダラ流し、腹を絞りながらヒリ出さずにはいられないといった印象で、それはそれは過酷な数十分だった。

そしてこの夜から、完全に絶飲食となった。もともとオレは少食だから、メシの1食や2食抜いたところでさほど困らない。しかし水分一切摂取禁止は結構ハードだ。病室はすこぶる暑く、大部屋だったため周りの人があれこれゴクゴク飲んでいる音も妙に気になる。

しかし、自らを減量中のボクサーだとイメージした瞬間に、事態は一変した。水ぐらい、なんだ。明日は待ちに待ったヤツとの試合だ。ヤツを倒すために、この1年、オレはすべてを賭けてきた。水道の蛇口は針金でグルグル巻きにした。へっへっへ、やるぜ。オレはやるぜ……。ヤツを叩きのめしてやる……。……ヤツって誰?

翌朝、カラッカラに干からびたオレを待ち受けていたのは、シャワーだった。車いすで浴室に移動する。白い長靴に緑色のゴム製前掛けを装着し、どうひいき目に見ても魚屋の若女将といった風体の、ぽっちゃりっていうか腕なんか丸太ん棒系看護婦さんに、「じゃあ脱いじゃってください」と言われる。

車いすで全裸になるのである。しょえー。なんつうかこう、屈辱的〜。一応股間にはちっさいタオルをかけてくれるのだが、事実上意味がない。特に車いすから浴室の介護椅子に移る時は、両手で体を支えなければならないため、タオルで我がジュニアを隠すことは不可能なのである。

ああ、間違いなく見られた……。冷え冷えとした浴室で、本来比70%程度のサイズしか有していないジュニアをたぶん見られた……。

いやしかしそのようなことを気にしている場合ではない。さらにスパルタンな状況が待っていた。シーネ(副え木)を外すのである。足首から先は、丸太ん棒系看護婦さんが持ってくれる。しかし、スネの辺りで力なくヘニャーンと曲がるオレの足。怖い。怖すぎる。

痛みも、もちろんないわけじゃない。しかしそれ以上に怖い。今、丸太ん棒系看護婦さんとケンカになって、「あんたなんかもう知らないんだからね!」と足首を離されたら、ダラーンである。足首から先、脱落するかもしれないじゃん。気ィ失うよ。

というわけで、丸太ん棒系看護婦さんの機嫌を損ねないよう会話に細心の注意を払いながら、シャワー終了。久々の入浴でサッパリとはしたが、見られたり痛かったり怖かったり気を使ったりで、どっと疲れた。

浣腸、絶飲食、シャワーと、身も心も清められ修行僧状態のオレを待ち受けていたのは、ジャジャジャーン剃毛ですよ剃毛。今度はしっとり落ち着きのある熟女っていうかオフクロさん系看護婦さんがジョリジョリしてくれたのだが、残念ながら剃られたのは右足スネ部分のみ。あとは「ついでにこちらも……」と、左手の点滴挿入部分あたりをジョリジョリされて、少年のようなスベスベ手足となったのだった。

こうしてあらゆる煩悩および一部ムダ毛とおさらばしたオレは、いよいよ手術室に向かう。病室のベッドからやたらと細いストレッチャーに移り、手術室へ運ばれる。自動ドアが開き、中に入ると、さらに別のベッドに移る。ここで2人の看護婦さんらしき女性と、やたら丸っこい男性に挨拶される。そしてさらにもういっちょ自動ドアの中が開き、中に入ったと思ったら、別のベッドに移る。やたらとベッドを換えるんだな〜と思っていたら、頭の上には無影灯。いよいよだ。

村山富市元首相みたいな立派な眉毛をたくわえたオッサンが、オレを覗き込む。「じゃあ麻酔かけていきますねー。まずはちょっとボーッとするかな」と言われた瞬間、確実にボーッとしてきた。「うわすげぇ、ホントにボーッとしてきました」。オッサンに完全にコントロールされてる感じがシャクだ。

と、「高橋さん」と看護婦さんに呼ばれる。「おっ、いよいよ本格的な麻酔だな? よーし、ぜってぇかからないぞ。麻酔なんかに負けてたま」などと思っていたら、「終わりましたよ」。なぬーーーーっ!? これからじゃないの? オレまばたきしかしてないよ。何が終わったのよ? 全然分かんなかったじゃないのよ!

それはとても不思議な感覚だった。普通に眠ってても、何となく時間の経過って感じるもんだけど、それがゼロ。ホントにまばたきしたぐらいの感覚で、時間的には完全にワープしていた。でも、時間がすっぱり切り落とされたシャープさがとても気持ちいい。

看護婦さんとお医者さんたちが、後片づけをしながら楽しそうに話してる。誰かが「ハンサムスーツの主役って誰だっけ?」「えーと、確か……」「谷原……」「谷原……」「谷原……、なんだっけ?」と誰も分からなかった様子なので、「章介ですよ」と口を挟むと、みんな「オワッ!」とビックリしてこっちを見た。ビックリしたみんなにオレもビックリし、相互ビックリである。

普通、麻酔から覚めたばかりの時は、朦朧として意味不明の言動を繰り返すことが多いらしい。でもオレは予想以上に意識がはっきりしていたので、みんな驚いたようだ。

「オワッ、はっきりしてますねー」「え? そうなんですか?」「普通はうわごとを言ったりするんですけどね」「いやぁ、なんか変なこと言っちゃってませんでした?」「言いはしなかったけど、酸素マスクを嫌がって暴れたのは覚えてます?」「マジすか? それは全然覚えてねぇなあ」「結構ドタバタ暴れて、押さえつけるのが大変だったんですよ」みたいな会話をしながら、手術室を出た。

後日、手術室担当の看護婦さんと、丸っこい男性が病室に来てくれた。「あの時の会話、覚えてます?」「あー、谷原章介の話? 覚えてます覚えてます」と答えると、「すごーい、信じられなーい。まさか覚えてるとは思わなかった。こんなに意識がはっきりしてる人は珍しいですよ」と言われた。オレは麻酔に勝ったのである。……勝ったのかなあ?

こうして1時間半ほどの手術を終え、エクスカリバー装着完了である。聖剣男である。でも、怖くて見られない。でも見たい。どうなっちゃてるんだろう、オレの足は……。

以下次回。

にほんブログ村 バイクブログ バイク モータースポーツへ
↑実はもう退院から2週間ぐらい経とうとしている。先日は松葉杖で千葉の56designにお邪魔し、中野真矢選手にインタビュークリックを敢行。SBKにスイッチクリックする真矢くんの心境をコッテリクリックと聞いてきた。この記事は、12月27日発売のライダースクラブクリック誌に掲載されます。カタカナの後にクリックを付けてみました。
081204
↑「ウリャウリャウリャ」と執拗に松葉杖攻撃するオレに、「縁起悪いからやめてくださいよー」と困惑しながらもあくまでも爽やかな真矢くん。

|

« 決めるのはオレだった | トップページ | 足に何か付いてた »

コメント

麻酔はいいですよネェ~
麻酔フェチです。
中でも好きなのはやはり全身麻酔。
マスクを顔に被せられた瞬間に呼吸を止めて、「出来るだけ粘ってやるんダ」って思っても、耐え切れずに呼吸をした瞬間にアウト。あの圧倒的破壊力みたいなモンは病みつきになりますな。
抜釘(こんな漢字だったっけかな?要は金具を外すコト)の時は半身麻酔(半身欲みたいだ)で、最初に背骨の間にブロック注射を打たれた。マヂ痛かった・・・(T_T)

投稿: webmaster | 2008.12.04 20:47

じょりじょりして…
女の子は毎日じょりじょり…大変ですぅ┐(´д`)┌ヤレヤレ
手術経験はありませんが、なんか病院おもしろそう!!
テレビの世界みたいでtv
早く元気になって下さいね♪
近日、HSR九州で八耐に臨みます!
注)仲間がレースデビューです。
まぁ、私は遅咲き応援団長兼レースクイーンですがねぇ(゚Д゚)ハァ?
いつかレーシングスーツ着る夢を持って応援行ってきま~す!

投稿: mateko | 2008.12.04 22:28

おお、懐かしい!僕も同じ場所で中野選手と対談しましたよ~ww
WSB頑張ってもらいたいですね!
ゴウさんも元気そうでなによりです。

投稿: ジョン19 | 2008.12.04 23:15

初めましてsign01
怪我で大変なことになっているのに、こんなことを言うのも・・・と思ったのですが。
面白い文面に、読むのを辞められなくなっちゃいましたup
怪我の具合はどうですか?
早くバイク生活復帰できるといいですね^^
ではでは、おじゃましました~~shine

投稿: はるか | 2008.12.05 16:32

>webmasterさん
いやぁ、マジですごいっすよね、全身麻酔。現代医学があの強大パワーを持っているなら、たいていの病気も治せるんじゃないかと思うんですけどね……。

>matekoさん
ええーっ、毎日ジョリジョリしてるんですか? ってことは、ツ、ツルッツル? レースクイーンよりも、ライダーめざして頑張ってね!

>ジョン19さん
元気は元気なんですけどねー。入院中も、整形外科の病室は看護婦さんが「あら、ナントカさんがいない」「またタバコかしら」みたいな、およそ病院とは思えない雰囲気でした。

>はるかさん
ブログ拝見しました! 同じ「ブログ」という仕組みとは思えないほどファンシーでグルメな内容に、自分のブログを見返してうんざりしています。バイク、オレの分まで楽しんでくださいね〜トホホ。

投稿: ごう | 2008.12.09 21:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91489/43319766

この記事へのトラックバック一覧です: 麻酔に勝った:

« 決めるのはオレだった | トップページ | 足に何か付いてた »