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セローに謝る

街乗りバイクとしてセローを所有しているが、ほとんど街乗りをしていない。昨年11月に都内に出かけたっきりだ。

仕事で出かける時は、クルマか電車だ。以前、YZF-R6を所有していた時にはしばしばバイクで出かけていたが、セローになってからはほとんど乗らなくなってしまった。乗る乗らないは僕の自由だが、カバーをかけたまま置き去りにされたセローの姿を見るたびに、責められているような気がして胸が痛い。走らせてもらえないバイクほど哀れなものもない。

YZF-R6で街乗りしていた5年前、僕は34歳で、その後も順当に年齢を重ねて今は39歳になっている。でも、それがバイクで出かける機会が減った理由だなんて、とてもではないが認められない。それはなしだ。…などと必死になるまでもなく、すぐに大きな理由に思い当たる。

セローでの街乗りは怖いのだ。少し補足すると、セローは、林道を走る分にはまったく文句がない、とても優れたバイクだ。トライアルの真似事で、(自分なりに)豪快に崖をよじ登ることもできる。舗装路のワインディングでも、ちょっとしたロードモデルよりよほど軽快に、しかも予想以上のアベレージスピードで走ってくれる。

それなのに、街乗りは怖い。その主要因は、僕自身の心の中にあって、セローにはない。街乗りでは、どうしても殺伐とした気分と衝動に身を任せてしまうのだ。少しでも前に、とにかく前に、と、気持ちが無闇に先走っている。こればかりはバイクに乗り始めた23年前とまるで変わらない。それほどまでに根強く、しぶといものが自分の中にある。

そして、そういった舗装路でのやさぐれた走りに、残念ながらセローはまったく向いていない。ぶわんぶわんのフロントフォーク、驚くほど効きが甘いフロントブレーキ、よれよれに感じるフレーム、腰砕けするタイヤ、思い通りに加速してくれないエンジン。僕が理想とする街乗りの走りにとっては、何もかもが負の要素だ。

僕自身にとってはまったく問題がない速度でも、セローは簡単に物事を諦めてしまう。このスピードからこれぐらいブレーキをかければ、だいたいこれぐらいの距離で止まれるだろう、という感覚、これぐらいアクセルをひねればこれぐらい加速するだろう、という感覚は、割とあっさり裏切られる。

自分のイメージと、メカニズムの間で生じるズレ。それが怖さの要因だ。そのズレを修正すれば──つまり、おとなしくしずしずと走っていれば──いいだけの話なのだが、どうしてもうまくいかない。誰にだって「わかっちゃいるけどやめらない」ものがあって、それはどこか破滅的でありながら、人生を鮮やかに彩りもする。

逆のズレ──、自分のイメージより圧倒的に速く物事が起こる場合は、何とかしてやろうという気になる。例えば僕は今、600ccマシンでサーキットを走ることが多いのだが、たまに1000ccマシンに乗ると、想像以上に速いスピードでコーナーが近付き、慣れていた自分のリズムではやるべきことが遅れるばかりだ。

でもその修正はとても楽しい作業で、ひとつのコーナーをうまく旋回できただけでも、ささやかながら達成感や充実感がある。今までにない次元に自分が到達する喜びがあり、プラス方向に物事が進んでいることが実感できるからだ。

セローで街乗りする時は、自分がセローに合わせて下りていかなければならない感覚がある。それはあまり楽しいことではないのだ。僕の場合は、自分をはるかに超えた能力を持つメカニズムに少しでも近づけた時に、初めて心が動く。そこにこそ、「バイクでスポーツする」意味があると感じている。

近々、セローのカバーを外して、林道に行きたいと思っている。そこはセローのフィールドだ。僕はセローに追い付くために必死になって汗をかく。きっとセローのタンクを軽く叩きながら謝るだろう。「偉そうなこと言ってごめん」「ヘタクソでごめん」と。

そして少しでもセローの能力を引き出せるように頑張る、かもしれない。努力する、かもしれない。……頑張りや努力を実現できるかどうかは、また別の話なのだ。でも、少なくとも街乗りしながらセローに文句を言うよりは、はるかに健全な関係でいられる。

080911

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コメント

何故かリンクを貼られていませんが、錚々たる河村聡巳さんと同様、一応、ビッグマシンの広告を担当しています“ペラッペラッ”で“小者”の私にも愛の手(1クリック)を… (;ω;) ※ネタは豊富じゃあ~りませんが…

投稿: BE MY BABY | 2008.09.11 13:26

サンバーは街乗りできるのに、セローは街乗りできないなんて、不思議ですね。
600とセローの関係って、インプレッサとサンバーのような関係になれないのでしょうか。

ところで昨日モテギで見かけましたが、声を掛けずその仕事っぷりを影で見守りました。(^^;
仕事なのか遊びなのか判断できませんでした。以上。

投稿: よしちか | 2008.09.29 14:02

>よしちかさん
観客席の写真を撮ってプレスルームに戻って拡大して眺めてたらよしちかさん発見! 写真では相変わらず「なんでオレはここにいるんだろう」といった表情に見えましたが、楽しめましたか? もてぎのグランドスタンド、ロードコースのストレートからは遠すぎるよね……。

投稿: ごう | 2008.09.30 19:39

ヤマハのお仕事だったのですね。失礼しました。
先ほどWebサイトの写真を確認しました。フレーム内に入れていただいて、ありがとうございました。
相変わらず何考えてるのか分からない表情は、僕の特徴ってことで。(実際、何も考えていません。(^^;)

僕はロッシがトップに立ったときに「これはチャンピオン決定だな」ということで、奥様と一緒に表彰台前へ移動しました。
なので、とっても楽しめましたよ。

その後は渋滞緩和のためにダートトラックのレースを見ていました。
あ、スクールで教えてもらった吉田さんも出場してるんだ・・・と思って楽しく観戦していたのですが・・・。
またスクールに参加して教えてもらいたいので、早く元気になってほしいです。

投稿: よしちか | 2008.10.05 02:59

>よしちかさん
あれ? よしちかラインちかラインさんが大写しになってる写真は使わなかったよ。他にも写ってましたかそうですか。

吉田さんには、オレもまだダートトラックの「タ」(濁点もない)ぐらいしか教わっていません。しかも何しろ大佐すなわちカーネルですから、きっと復活してくれるものと信じています。

投稿: ごう | 2008.10.05 10:14

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