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とにかく走れ! いいから走れ!

12日は久しぶりの筑波スポーツ走行に行った。1ヶ月ほど前に、たまたま予約を取っていたのだ。まさかノリックの通夜の前の走行になるなんて。ホント、勘弁してほしい。

火、水、木と3日間毎日ノリックの実家にお邪魔させてもらい、あれやこれやで連日1、2時間の睡眠で、しかも風邪ひいてるし、精神状態も自分では落ち着いてるつもりだけど普通じゃないだろうし、何しろ通夜の前にコケたらシャレになんないし、正直やめてしまおうかと思った。

でも迷いは一瞬だった。「とにかく走れ。いいから走れ」。生前、ノリックはしょっちゅうオレにそう言っていた。四の五の言ってねぇでバイクに乗れ、というわけだ。「るせぇなあ、分かったよ、走ってやろうじゃねえかよ!」と、筑波入りした。

1本目は、オレが以前所有していたYZF-R6をヨッシーさんに借りた。筑波を走り始めて2回目の走行で、ノリックに走りを見られたバイクだ。その時のタイムは1分19秒。笑っちゃうほど遅かったオレを見て、ノリックは「とにかく走り込むこと!」と言った。

その時より少しはマシになったオレを、ノリックに見せたかった。彼にもらったレプリカヘルメットをかぶってコースインする。久しぶりのR6は本当に素直な挙動で、「いいバイクだなあ」と思った。しかし走りは相変わらずのヘタレっぷりで、自分でおかしくなるほどだった。「悪ぃ、言われた通りにちゃんと走り込んでないことがバレバレだよな」と、走りながら笑ってしまった。最終コーナーに進入する時、「もう! 全然大丈夫だから、攻めて攻めて!」とノリックに言われているのは分かったが、オレはオレのペースを守った。彼には彼の、オレにはオレの役割ってもんがある。

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走行終了のチェッカーフラッグを受けた瞬間、涙があふれ出た。人生のチェッカーを受けずに逝ってしまったノリックに、このチェッカーフラッグを見せたかった。1コーナー、S字、1ヘア、ダンロップ、CX、2ヘア……。ゆっくり、ゆっくりと回る。スクリーン越しの筑波の眺めを、ノリックに捧げようと思った。今頃は棺に収められているはずだけど、そんなの違う。全然認めねぇ。君はサーキットにいるべきなんだよ……。ここが君の居場所じゃねぇか。何やってんだよもう!

嗚咽が止まらなくて、ゆっくりでもバイクを走らせていることが辛かった。ヨッシーさんには悪いけどR6をスッ転がして、倒れて空でも眺めながら泣いていたかった。

ピットに戻ってもR6から降りることができなかった。すぐにヨッシーさんの走行だったので、「降りなくちゃ」と思っているのに、オレはR6にまたがったままわんわん泣いていた。38歳・3児の父が人前でこの姿はどうだろう、とか、早くヨッシーさんにR6を渡さなきゃ、とか思いつつ、ぐしゃぐしゃに泣いた。

R6を支えながら「降りた方がいいですよ」という優しいヨッシーさんの言葉に、余計泣いてしまうといった感じで、どうにもならなかった。3日間、オレはいろいろな連絡役や手伝いをする必要があったりして、立場上、泣いているわけにはなかった。でも筑波はヤバイ。ヘルメットをかぶってマシンにまたがっている限り、ここにはオレとノリックだけしかいない。抑えがまったく効かなくなってしまった。

そのうち、「テロテロテロリーン♪」というおなじみの走行開始のチャイムと、エキゾーストノートが聞こえてきた。ヨッシーさんを走らせてあげないと、と思い、「ごめんね」と、彼にバイクを渡した。ヨッシーさんは大きくため息をついてコースに出て行った。

さんざん泣いたからもう大丈夫だろう、と、誰もいないピットの椅子に腰を下ろすと、メインストレートを駆け抜けるバイクのエキゾーストノートに、またドバーッと涙が噴き出た。「だからここがノリックの居場所なんだってば!」。彼のヘルメットを抱えて、オレは声を上げて泣き続けた。

泣きながら、オレは笑っていた。「S字でヒザ擦ってないじゃないですか!」というノリックの声が聞こえてきた。2004年、彼の筑波でのプライベートテストを見ていたら、確かにS字でヒザを擦っていた。とにかくヒザを擦れ、というのが彼のアドバイスだった。「何バカ言ってんだよ。S字でヒザなんか擦れるわけねぇよ。それよりノリックは何やってんだよ。死んじゃってんじゃねぇかよ」と、大笑いしながら大泣きしていた。

今回のR6でのベストタイムは、1分6秒3だったと思う。笑っちゃうぐらい攻められない。まぁかつて自分のものだったとはいえ今は借り物のバイクだし、今日はチェッカーを受けて無事に帰ることだけが目的だったから、タイムは気にしていない。でもさ。ノリックのヘルメットをかぶって走れば、彼に筑波の光景を見てもらえるかと思ったけど、「ごめん、これじゃ遅すぎてかえってイライラするよな」と笑いと涙が止まらなかった。

サーキットでは1秒でも、コンマ5秒でもタイムが速くなれば、見える景色がまるで変わってくる。彼の今年の全日本での予選タイムは56秒1。筑波で10秒も速けりゃ、彼が見た景色とオレが見ている景色はまったく別物だろう。「これじゃ追悼にもならねぇし」とおかしくて悲しくて、たまらなかった。

走行開始から10分ほど経ったところで、ヨッシーさんが戻ってきてしまった。ピット脇にR6を停め、瞬きもせずメーターのあたりをじっと見つめていたヨッシーさんは、しばらくそうしてから「……走るのやめます」とピットに入った。そりゃそうだ。バァバァと泣きじゃくるオレを見た直後に、集中して走れという方が無理な話だ。本当に申し訳なくて謝ると「違いますよ。GOさんのせいじゃないですよ。オレもノリックのファンなんですから、やっぱ…」と言った。その言葉にまた涙が出てきたりして、結局走り終わってから30分ぐらい泣き続けた。…どうなの? ヒクヒク言いながら泣きじゃくる38歳って。……汚ぇ絵だよな…。

もう1本走行枠を取ってあったが、迷わなかった。走るよ。走りゃいいんだろう。今度は自分が持ち込んだZX-6Rで走った。さんざん泣いた後なので、少しスッキリして走行する。6RはR6に比べると対照的にデカくてモッサリしているが、意外と違和感はなかった。ドッシリとした安定感がある分、ダンロップの切り返しなんかは相当頑張らないといけないが、気持ちいい汗が流せる。

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そしてこの日2度目のチェッカー。今度は泣かなかった。ノリックも鈴鹿の2勝目は泣かなかったし、この勝負、引き分けだな、と思った。P-LAPは付いてなかったが、付き合ってくれた友人カメラマンのHydeがコースサイドでカメラを構えていて、「R6の時より間違いなく速い、と思う気がする感じの印象と言えなくもない」とのことだったので、まぁ6秒フラットか5秒台後半か、そんなもんだろう。

走行後、筑波職員のHさんにプレスのゼッケンを返しにコントロールタワーに行くと、オフィシャルの人たちがノリックの映像を食い入るように見つめていた。Hさんは、「ここはノリックが育ったサーキットですからね」と言った。

そしてノリックの通夜と、翌土曜日の告別式を迎えた。筑波でさんざん泣いたし、知っている人がいっぱいいるから、ぜってぇ泣かねぇ、と思っていたけど、ちょっとだけウルウルしてしまった。悔しい。でも、通夜と告別式のノリックは、みんなのノリックだ。筑波ではオレだけのノリックだった。走りながらの、そしてピットで大泣きしながらの彼との対話は、もちろんオレが創り出した幻想だ。でもオレは、その対話をよすがに生きていくのだろう。

彼がサーキットにいないことは、とても寂しい。でも今、オレ自身があわてて生き様を変える必要はないとも思う。オレはノリックとはまるで違う(当たり前だ!)。彼はすごくせっかちだったけど、オレはそうでもない。彼はバイクで速かったけど、オレは速くない。彼は人に厳しく自分にも厳しかったけど、オレは人に厳しく自分に甘い。彼はフェラーリに乗っていたけど、オレはインプレッサだ。彼は彼、オレはオレなんだ。

「スゴイ人・ノリック」との付き合いでも、「曲げねぇ! ぜってぇ曲げねぇ!!」と自分を貫いてきたからこそ、彼との10年を無理なく過ごして来られたのだ。だから、これからも変えない。……と言っても、ちょっとは変わるところもあると思うけど……。

今日から仕事だ。いきなりバイクに乗る仕事なので、今まで以上に気を引き締めようと思う。……あ、さっそく影響受けてる。ちょっと悔しい。

いろいろなことが、とにかく悔しい……。

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コメント

 お疲れ様でした。
また、みんなで筑波で笑いましょう!

投稿: Qちゃん | 2007.10.15 09:52

筑波走行の報告勝手に待っていました。
お疲れ様でした。
私もヘルニアが痛い、子供の進学で金がネエだと色々ありますが、絶対レースは止めませんから!
そして大好きな趣味で死んだりしませんから!!

投稿: knack2 | 2007.10.15 23:26

>Qちゃんさん
はい〜、サーキットで会える日を楽しみにしています! もちろんゲラゲラ笑いましょう!

>knack2さん
いやー、筑波では「泣き疲れたのなんかいつ以来だろう」っていうぐらい泣きましたよ。レースをしてらっしゃるんですね。家計に負担のかからない程度に楽しんでくださいね。と、さんざん家計を圧迫しているオレが言ってみる。家庭のある身としては、「絶対やめねぇ」とは言わず、「場合によってはやめちゃってもいいかな〜」「休んじゃってもいいかな〜」ぐらいのスタンスがちょうどいいのかもしれないですね。

投稿: Go | 2007.10.16 12:56

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