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タッチ! ア〜ンド、ゴー!!!

PICK UP日記・第1弾。5月28日、月曜日の出来事。

熊本ー羽田のJL1815が羽田空港に着陸しようとしていた。天候は快晴。東京湾は少し白波が立っている。オレは窓際に座っていた。隣にはヒデヨシ。2人で手をつないで「もうすぐ着陸だね」「そうだね」「うふふ」「あはは」といちゃいちゃしていた。

モニターには前方の様子が映し出されている。滑走路が見えてきた。が、センターラインに乗らず、ずいぶんとフラついている。Gがスッポ抜けたりグッとかかったりと機体の姿勢も落ち着かない。エンジン回転数が激しく上下している。

ヤバイ。
こいつぁヤバイでしょう。

オレはヒデヨシの手を強く握った。ヒデヨシもオレの手を握り返し、2人で顔を見つめ合った。モニターに目をやると滑走路がかなりの勢いで近付いている。高度も低い。もう着陸だ。機体はまだ相当斜めだ。このまま行ったら逝っちゃう〜!! だめっ、だめよっ、まだイッちゃだめっ!!!

ああそれなのに、JL1815はイッてしまった。若い。若いね。JL1815は左に大きく機首を向けたまま、左側の車輪だけをドスンと着地させてしまったのだ。いわゆる半イキ状態である。

「このまま行ったらひっくり返っちまうじゃねぇの?」といった雰囲気で機体は左を向きっぱなしだ。ヒデヨシの手が汗ばむ。オレはヒデヨシのロン毛にそっと口づけして、「大丈夫、大丈夫だからね」と言った。うえ。さすがに気持ち悪ィな……。

着地しても機首は上げたままだった。「む、これはやる気だな!?」と身構えた。エンジン推力が増し加速Gがグウッとかかると、JL1815はそのまま再離陸した。いわゆるタッチ&ゴーである。

着地していた時間はほんの1、2秒だった。機長の山田太郎(仮名)の瞬間の判断により、乗客213名(推定)の命が救われのであった。

「いやぁ、訓練してますからね。大したことはないですよ」と山田機長は後に語ったと言われる。「お客さまの安全が第一です。乗客の皆さんにケガがなく、訓練通りの手順で物事を進められ、大変満足しています」と、ピエ〜ル髭を指でしごいた山田機長は、そのまま夜の鶯谷へと消えていったとされる。

話がそれた。

機内は静かだった。「すっげぇタッチ&ゴーだよ!!」「どうなるのどうなるの?」「何コレ何コレ?」「すげぇ!!」「なんかアナウンスあんのかな?」「あんじゃね?」「何て言うのかね!!」「羽田に降りるのかな」「ね! ね!」と大騒ぎしているのは、言うまでもなくオレとヒデヨシだけだった。

きちんと機長から説明があり、房総半島をもう一度グリッと1周してから、羽田空港の別の滑走路に着陸したのは約20分後だった。再着陸の時もオレとヒデヨシは手を握り、指を激しく絡め合った。

その後、2人の姿を見た者はいない……。

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