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氷点下の草津はいろんな意味で寒かった

草津で取材。

最高気温1℃(笑)。雪が舞っていた。ヤロウ4人でメルヘンチックに今季の初雪を迎えてしまった。

今回は、いわゆるクライアント仕事。もっというと、クライアント>クライアント>クライアント>オレという流れの仕事なので、オレなどは超末端だ。しかし事前の話では、総元締めクライアントいわく、取材先で昼飯を用意させますよ、かなり本格的ですよワッハッハ、と聞いていた。そりゃもう、てっへへ状態で前日から胃腸の調子を整え、朝食もほとんど食わずに取材に臨んだ。

数日前に草津に雪が降ったということもあり、ノーマルタイヤ装着車しか持っていないオレは朝の6時に家を出て、まずは赤羽に。赤羽ですよ赤羽(笑)。そこから浦和とか大宮とか上尾とか桶川とか熊谷とか深谷とか本庄とかにもちょろちょろと止まってなかなか埼玉県を脱出しないクソ田舎特急に揺られてノタクタと草津の最寄り駅、長野原草津口駅までやって来た。駅でカメラマンを含むスタッフたちと合流し、カメラマン車で現地に向かい、朝10時半からみっちりと撮影をして、14時頃になったと思ってください。

どうも様子がおかしい。そろそろ「本格的ですよワッハッハ」が出てきてもおかしくない時間だ。ん? という空気が、取材陣の間に流れた。

現地対応してくれた支配人によると、どうやら、「せっかくプロのカメラマンが来るんだから、自分とこのHP用に料理の写真を撮ってくれ」ということらしい。我々の取材は料理とは全く関係なかったんだけど、何せクライアント仕事だから、「へいへい、それはもう、喜んで」状態だ。さっそく料理の撮影モードになる。言うまでもないが、「終わったら食える、終わった食える」という期待がモチベーションになっているわけだ。

ウマソーな料理が続々と目の前に運ばれてきた。「な、なんだこれ!?」「すげー、見たことねぇよ」「コレなんスかコレ」「うわ、ここ、これがマグロ?」とコーフンする我々。うーむ、うーむと唸りながらベストアングルを探すカメラマン。それを「さすがだ…」と腕組みしながら見つめる支配人。そして、最後にデザートの撮影が終わり、カメラマンが「ハイ、オッケーです」と言ったその瞬間!

すべての料理は片付けられていた。
キレイサッパリ。
ひとつ残らず。

ん?

あ!

ああ!

撮影してる間に料理が冷めちゃったから、新しく作ってくれてるのね。

そうだよね。

そうそう。だって我々4人だし、いやこれだけの料理を4人分用意するのは大変なことですよ。

待ちます。
いくらでも待ちますよ。
ハハ。
ハハハ。

そこへ、支配人の奥さん登場。そして一言。
「皆さん、このままお昼は食べずに東京に帰られるんですかぁ?」

何を言っているのか分からなかった。空腹による幻聴かと思った。しかし彼女は無垢な笑顔をたたえながら、我々の答えを待っている。

えっ? あっ、まっ、

とか言いながら顔を見合わせる4人の間には、凍り付くような空気が流れた。

あっ、まぁ、あの、その、ええ、そう……なりますかね的な、あいまいな返事をする、目を泳がせた4人。

いやそりゃね、取材だからっていつもいつもタダ飯を狙ってるワケじゃないですよ。ホントに。特に今回の仕事は料理は関係ないから、「書くために食う」という奥の手も使えないし。そんなに厚かましくはないですよ。えぇ。でもさ。でも。総元締めクライアントが言ってたわけですよ。「取材先で昼飯を用意している、しかも本格的ですよワッハッハ」と。何だよと思うよそりゃあ。マジで4人とも固まったもん。

山ン中だから「じゃあちょっとそこらへんで食ってきますわ」というワケにもいかないし、しかも、総元締めクライアントが来ないことには、いわゆるインタビューができないから、動けない。幽閉である。当初は15時に着くはずだった総元締めは、16時を過ぎ、16時半を過ぎ、まだ来ない、メシ食えない。17時を回った頃に、ようやく登場し、わずか15分ほどで必要なインタビューは終わったのだった。

カメラマンは自車でとっくに帰ってしまったので、残された我々3人で帰りのバスやらタクシーやら電車の時刻を調べていると、「送ってくよ、バス乗り場まで」と総元締め。「はっ、ありがとうございます!」と言った営業マンが、こっそり「バス乗り場までだとよ」とオレの脇腹をつつく。笑いをこらえるのが大変だ。メシも食えず、送迎もバス乗り場までと来たもんだ。その車内で、「どうでしたか料理は」と総元締め。「はっ、あの、その、いただけませんでした!」とオレら。「あれー? おかしいな。人数分用意しとくように言っといたのにな。まあ、また来てくださいよおいしいからワッハッハ」。

2度と行かねぇ。

という空気が車中を満たした。

バス乗り場近くの食堂で食ったケンチン汁は、死にそうにうまかった。しかも食堂のオッサンが親切にもタクシーを呼んでくれた。長野原草津口駅は使わずに、タクシーで草津から軽井沢まで行き(1万6000円!)、新幹線で帰ることにした。50歳すぎた運ちゃんはラリーやバイク好きで、「雪道で4WD乗ると、結構アンダーステアが出るでゲスよね。こう、一瞬アクセル抜いてタックインを使ってやらねぇと、うまく曲がらないんでゲスよ」なんて、めっちゃ詳しい。交差点を曲がる時はサイドブレーキを引くらしい(笑)。

軽井沢まで小1時間の道中、ケンチン汁で腹が満たされ、運ちゃんとの会話で心が満たされ、日中の出来事を忘れ……ねぇぜ絶対!

ああ、この話を読むと、「おまーら取材のモンはいつもタダメシが当たり前だと思ってんじゃねぇの?」と思う人がいるかもしれませんが、そんなこたー全然ないんです。料理記事を書くとき以外は、こちらからせがんだりすることは、決してありません。まぁ料理の撮影なんかだと、撮影後に「まぁせっかくですから召し上がってみてください」みたいな話になることは多いけど。

ただ今回はクライアント仕事で、総元締めが「食える」と断言していたこと、しかもクライアント仕事なもんで、誰も「その撮影済みの料理を4人で分けてでもいいから、どうか、どうか食わしてください!」と言えなかったこと、山の中で他に逃げ道がなかったことなど、悪条件が重なったわけです。がんじがらめで身動き取れない状況だけに、マジで笑えました。葬式とか、先生の説教中とか、笑っちゃいけない時ほど笑いたくなるでしょ? ああいう感じ。

そんなこんなで、幽閉されたまま日中を過ごし、例によって草津を見て歩く時間はなかった。しかしなかなか楽しそうだ、草津。ゆっくりと訪れてみたいな。

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